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もぐら通信 Vol.12
負けて勝て

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もぐら通信 vol.12
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〜 目の前に起こる出来事が最良の教材 〜

今回のテーマ:負けて勝て

つい、先月のことです。とある客先で会議をしていた時のことです。
これまでの進捗報告と、今後の展開について話をしていました。上司と私
の2人で出席しておりました。前半戦を終了し、後半戦は、いよいよ肝心
な今後の展開についてです。休憩をはさんで再開ということでした。

 私は、この休憩中、前半の状況から、次の時間で補足すべき点や、
もう一度先方と確認すべき事項などを挙げ、今日の会議のゴールへ向けて
上司と打ち合わせをしておりました。その際、もう少し全体像をきちんと
提示し、現在地を示しながら、今後どう展開していくかという点をもっと
明確に伝えるべきだ、と主張しました。それに対し、上司は、全体像を伝
えることも大事だけれど、お客様に今の段階でそれを伝えたところで、
理解出来るかな、と。

しかし、私にはその上司の助言に納得できませんでした。すると、
「ならば、もぐら君が思うことをお客様に伝えてみたらいい。」
と、言ってくれました。

 さて、短い休憩は終わり、会議後半戦の始まりです。会議の進行は私の
担当でしたので、休憩中の打ち合わせの通り、前半のおさらいをしながら、
合わせて、今後の展開について、全体像を伝えました。

するとどうでしょう。息悠々と話し終えた私とは裏腹に、お客様の顔には
「?」の文字が浮かんでいます。

「いかがでしょうか。」
と、問い掛けると、
「ちょっと、今そこまではよく分かりませんね。」
という言葉が返って来ました。


 この日の帰り道、先程の会議のことが話題になりました。

 自分では必要だと思いお客様に伝えたのですが、実際にはそうでは
なかったのです。生意気にも上司が話している内容はお客様に伝えるべき
メッセージとして不足しているような、また正確でない様な気がして、
私にはどうしても、もう少し詳細な説明や全体像が必要なのではと思い、
言わずにはいられなかった事を上司に打ち明けました。

「もぐら君、君が悪いとか、間違っているということではないんだよ。
ただね、相手に合わせるということがまず先だと思うんだ。」

上司は続けて、昔こんなことがあったと話してくれました。

「もう、7、8年位前になるかな。私が以前勤めていた会社で営業を始めた
頃だったんだけど、私が扱っていた商品はとても専門性が高いものだった
から技術担当のTさんと同行でお客様の所へ訪問したことがあったんだよ。
その時、私は製品の詳しい内容よりも、自分の生い立ちや、出身地の話、
いわゆる世間話みたいなことばかり話していたんだ。そしたら、
そのTさんに、『お前はちっとも知識がない。あんな話じゃ駄目だ。』と
言われたんだ。

そうかな、でもお客様も楽しそうにいろいろ話してくれたし。でも、やっぱり
もっと専門的なことを話した方が良かったのかな?なんて考えていたら、
会社に戻った時には、ちゃんと注文書が届いていたんだ。

 また、別のお客様にTさんと同行したんだけど、その時はTさんが製品の
技術的な内容をかなり詳しく正確に、専門的な言葉でたくさん話して
くれたんだ。でもね、そういう時に限って注文にならないことが多かった。
これはどうしてだと思う?」

 私は、黙ってただ頷くだけでした。

「いいんだよ。製品について詳しい知識があることはとても大事なことだし、
必要なことだと思う。だけど、まだ、相手がその製品について良く知らない
場合や、そこまで興味や理解が進んでいない場合、専門的な事をたくさん
言われても、どうかな・・・。」

そして、
「つまり、相手がどうかという事が大前提なんだと思う。詳しい情報が必要な
人にはすごく為になったと喜んでくれると思う。そうじゃない場合は分かり
易い言葉で説明したり、まずは相手の要望を聞くためにいろいろ話をして
もらえる環境を作ること。このお客様にとって、今、何が一番必要なのかを
見極めることが、第一なんじゃないかな。」
と。

「でも、私はあまり専門的な事は良く知らないからなんだけどね。」
と付け加えて、笑っていました。

 私は、時々こういう失敗をよくしてしまうのです。自分で勉強をして、
ちょっと詳しくなると、お客様を自分の成果発表会の観客にしてしまうのです。
きちんと説明出来ること、正確な情報を伝えることが出来ることは良いこと
かも知れませんが、相手側がきちんとその情報をキャッチ出来る受信機が
ある事、それ以前に、その情報を必要としている状態でなければ、これは
マスターベーションに過ぎないのです。

お客様にとってみれば、全く意味がないどころか、ややもすると不快感こそ
与えてしまうことになりかねません。

以前、『負けて勝て』という言葉を聞いたことがありますが、自分がバカに
なっても相手に理解してもらえるように、相手の立場に合わせて伝える
ことが大事だということでした。たとえ、相手が無理難題や言い訳を言った
としても、まずはそれを受け止め、その状態に合わせて、発信することが事を
うまく運んでいくすべなのだと改めて考えました。

 私は、あぁまたやってしまったと反省しつつ、夜風に吹かれながら、
上司の背中に、こう問い掛けました。

「どうしたら、それがわかるようになるのですかね」
「ま、たくさん失敗することだよ。大丈夫。」

と、屈託のない笑顔だけが答えでした。

私には、まだまだ失敗が足りないようだと感じながら、上司と別れ、
家路へ向かう地下鉄へ乗り込んだのでした。


皆さんは、こんな経験ありますか?

−end −

※レポート部分のみを抜粋して掲載しております

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