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もぐら通信 vol.18 2005.01.21
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〜 目の前に起こる出来事が最良の教材 〜
「もぐらさん、あなたの仕事の進め方とは、どのようなものですか。」
年始早々、あるお客様へ訪問した時のことです。初めてお会いした取締役
の方から、核心を突いた質問をいただきました。
私は、この問いに対し、丁寧に真心をこめてこう答えました。
「まずは、お客様の現状を知り、困っていることや実現したいことを把握
し、そこで自分たちが役立てそうなことは何かを考え、そのお客様の環境
や状況に合わせて、提案させて頂いています。具体的には、メールや電話、
面談を繰り返しながら、自分たちのことも少しずつ知ってもらい、徐々に信
頼関係を作り、その結果、お客様から提案の機会をいただけるようにする
ということです。」
すると、この取締役のSさんが、まっすぐに私の顔を見て、少し頷いて
くれました。
私は、続けて、今対応させて頂いている農家の青年達の話を始めました。
「九州で梨農家を継いでいる、2代目、3代目の青年達がいますが、彼ら
は今、ある課題に直面しています。これまで、親の代から梨の生産を家業
としてきましたが、ただ梨を生産しても、仕事の喜びを感じられない状況
だそうです。具体的に言うと、生産した梨を農協へ協出するという販売ル
ートしか持っておらず、精魂込めて、おいしい梨を作っても、顧客の顔が
見えず、誰が買ってくれているのかも分からない。『おいしい!』という
ハガキの1枚も無い。このまま梨農家を続けていても、続ける楽しみも無
く、何のために仕事をしているのか分からなくなってしまう、と言うので
す。
やはり、お客様に喜んでもらって、それで売上が伸びて、それではじめて、
また次の世代に、この仕事を受け継ぐ価値が見出せるのではないか、という
のが彼らの主張でした。私は、これにまったく同感です。
そこで、この状態をなんとか打破しようと、新しい販売ルートの模索と、
展開方法をこの9人の青年達と、一緒に仕組みづくりを考えています。」
ここまで話し終えると、Sさんは、
「まさに、顧客志向だね。」
と、言いました。
そして、今度はゆっくりと、Sさんが話出しました。
「実は、当社ではこれまで売上を伸ばす為に、『売上○○万円だ、利益
○%だ』と、数字での目標ばかりを掲げていました。各営業にも、その
ことばかりを意識させてきました。
ところが、売上を追いかけて、商品を無理やり押し付けようとしても、
売上に繋がらない。実際、売上に繋がっている場合というのは、お客様
がその商品に満足し、リピートしてくれた場合や、また周囲にも上手く
いった様子を話してくれ、他のお客様を紹介していただけた場合なんですよ
ね。そうじゃないと、なかなか売上に繋がらない。結局、どこか売れる
ところはないかと探して回るよりは、目の前のお客様に満足してもらう
ことが、売上に繋がることなのですよ。本当の意味での顧客志向という
ことですね。」
ここまで、話すとSさんは、今の会社の状況や、経営に関わる人間と
して感じていること、また個人として感じていることを詳しく話してく
れました。
Sさんによると、個人としては、売上を上げる為には、顧客志向でな
いと上手くいかないと感じているのですが、会社の実情は、まったく逆
の方向に向いて、少なからずそうした矛盾を他の社員も抱えているだろ
うと。
本来なら、会社の進むべき方向と、個人の目的や目標が一致してこそ、
顧客志向が生まれ、仕事への原動力となり、つまりは成果につながると、
Sさんは常々考えていたそうです。そして、今回の話で、やはりそうで
あるはずと再認識した、と私に言ってくれました。
但し、この会社と個人の目標の一致とは、言うほど簡単ではありません。
私自身、今から十数年前、同じような矛盾で悩んだことがありました。
様々な期待や夢を胸に、田舎から上京し、大手通信機器メーカーに入社
しましたが、当時の私の期待や夢がかき消されるまでに、そう時間は掛
かりませんでした。しかし、そのままその会社に居続けることが、自分
自身にとって幸せでは有りませんでしたし、結果的に周辺の人にも、強
いてはお客様にとってもマイナスでした。
ただ、今経営者の立場になって思うことは、経済という大海原の中で、
どんなに理想を求めても、どんなに立派な経営理念を掲げても、必ずし
もその通りになるとは限りません。むしろ、描いたとおりにならないこ
とが殆どです。会社と個人の目標の不一致は絶えず起こりうることです。
だからといって、諦めるわけでも有りません。
つまり、お互いにその同じ社会の中で生きるものとして、どう歩み寄
っていくか、いかに一致出来る部分を作り上げていくか、ということ
ではないでしょうか。
最終的には、会社の進むべき方向と自分が進むべき方向があまりにも
違い過ぎる場合は、その会社を辞めるということも、選択肢としてあって
良いと思います。だだそれは、最終論ですから、不一致を減らす努力を会社
側としても取り組みたいところです。
そうした努力の余地がある会社は、まだまだ多いと感じています。
面談の最後に、Sさんがこう付け加えました。
「世の中には、売上を上げる為の仕組みや展開方法は数多くありますが、
どんなにすばらしい仕組みがあっても、この会社と個人の目標の一致を
なしえずに仕組みだけを導入しても、上手くいかないと思っています。
ですから、この大命題について是非、当社で実現して欲しい。」
年明け早々、ありがたいことに私は今年一番の大きな課題をいただきまし
た。
寒中のビル街を歩く私の背中に、緊張という風がサーッと吹いていき
ました。
−end −
※レポート部分のみを抜粋して掲載しております
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