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もぐら通信 Vol.29
なぜそうしないのかではなく、
そうしたくなるように働きかける

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もぐら通信 vol.29             2005.12.22
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  〜 目の前に起こる出来事が最良の教材 〜

■今回のテーマ:
なぜそうしないのかではなく、そうしたくなるように働きかける

「僕、 いらち(*)なんですよ。」
そう言って、軽くため息をつきました。

日本列島に大寒波がやってきた先週、私たちは四国にある会社さんへ
訪れた時のことです。

 この会社さんでは、営業のリソースが少なく、このまま
では、今後の売り上げ拡大は頭打ちになるという現状を打破するため
に、限られたリソースで効率的に営業できる仕組みを作ろうと新しい
プロジェクトがスタートしました。私はそのお手伝いをしに、毎月、
お邪魔することになりました。
 今回で2回目の訪問となりましたが、このプロジェクトをスタート
させてからの1ヶ月で様々な課題が浮上してきました。

 実は、このプロジェクトには、営業アシスタント、営業、また販売
代理店との連携を行う部門、さらに、商品・サービスの企画を担当す
る部門と様々な部門の人々が関わり、部門間を越えての取り組みを考
えていました。

 ところが、蓋を開けてみると、通常業務を抱えつつ、時間をやりく
りし、慣れない業務を一生懸命対応していたのは、営業アシスタント
の女性と、社の切実なる状況をなんとかしたいと真剣に考えていた営
業部の部長だけでした。

 なにせ新しい取り組みなので、みな、手探りの状態ではありました。
それゆえ、活動を進めていくと、事の大小と問わず、社内で決めなけ
ればならない様々なことが毎日のように出て来ました。これらの対応
を行うために各部門からその集まったはずのメンバーは、いつのまに
か、慣れ親しんだいつもの仕事に没頭し、顔を揃えることは殆どあり
ませんでした。

 これを見ていたある一人のマネージャーが手を挙げました。

 マネージャーのHさんは、当初、メンバーには入っていませんで
したが、今回のプロジェクトの中心になって部門に所属していまし
たので、活動状況を知らせるレポートを受け取っていました。Hさ
んは、日々現場から報告されるレポートを見て、密かにこの取り組
みの可能性と効果を感じていました。

 レポートには、顧客との綿密なやり取りが記され、今まで営業が何
度も足を運んでも聞き出せなかった情報や活動面での課題、そして
リアルな顧客の状況や会社として取り組むべきことのヒントが散りば
められていました。”これは絶対価値がある、今までやりたくても出
来ていなかったことが、今度は実現できる”という気持ちが日に日に
大きくなってきました。

 ところが、そんなHさんの気持ちとは裏腹に、大半のプロジェクト
メンバーは毎日の業務に忙殺され、どこか人任せな姿勢であるこの状
況に、Hさんは危機感を感じずにはいられませんでした。

 「僕も、3足のわらじを履いているんです。忙しいことには変わり
ありません。私は今回のような取り組みをしていかないといけないと
思っています。有効な情報が吸い上げられています。せっかくの取り
組みが駄目になってしまいます。だから、今回途中からなんですが、
参加させてもらいました。どうしてみんな受身なんでしょうか。なぜ、
もっと積極的にどうしようかと動こうとしないのか。もうたまらなく
なって、この間、やれと言ったんです。」

 
 そこで、私は一言、Hさんに言いました。
「Hさんが名乗りを上げてくださったことはとてもうれしいです。
しかし、やらない人たちにどうしてそうしないのかと問い、やれと
命令しても、結果はあまり変わらないと思いますよ。」

「でも。」
と、もどかしさをあらわにするHさんに、私は続けてこう言いました。

「Hさんが言うことも良くわかります。しかし、自分でその問題に
気づき、実行できていたら、みんな社長になっています。そうでな
いから、相手が動きたくなるように、みんながこの取り組みに興味
を持って参加したくなるように、徐々に働きかけるしかないんです。」

 
 確かに、今のままではこのプロジェクトは成功しませし、改革を
して売上を上げたいという営業部長の想いは実現しません。しかし、
すぐには変わらないのです。今までのやり方を変えるのですから、
言葉で言ったくらいでは、そう簡単に変わりません。ましてや、そ
れぞれの部門の都合、個人の都合、そして個人の理解度にもギャッ
プがあります。ですから、ある程度の時間が必要なのです。

「そうは言っても、ゆっくりやってはいられません。半期単位で結果を
出していかないと。」
と言うHさんに、私は繰り返し言いました。

「それでも、人はやれとだけ言われても変わりません。自分で理解
して自らやろうとしない限り、変わらないんです。こうした問題は
どこの会社でもあることです。みな、そこでつまずくのです。やり
方とか手法とかいう前に、社内の人の問題が一番大きな壁なのです。」

 私は、こうした仕事をしているお陰で、これまで自分の会社以外
にも様々な会社の内情を垣間見る機会がありました。何かが上手く
いかない時、大半は戦略だとか手法だとかの問題より、人の問題な
のです。なかなか社員が思うように動いてくれないと嘆く社長さん
や部長さんをたくさん見てきました。自分の会社だって同じです。

 今、まず必要な事は、まず現場レベルであがっている細かい課題
Hさんが出来ることをひとつずつ解決し、今回の取り組みの基本的
なルールを確立すること。その上で、Hさんが感じたように、少し
ずつでも興味を持って自発的に参加してくれる人を増やすことです。
これが出来きた時には、成功はより近いものになっているはずなの
です。

 人にやれという前に、Hさんが今回加わったことで解決されるこ
と、整理しなければならないことがたくさんありました。

 Hさんは、自分に言い聞かせるように、
「そうですよね。そうですよね。僕、いらちなんですよ。でも、確
かに言うだけじゃ変わらないでしょうから、僕が出来ることをやり
ます。そして必ず他の社員にももっと興味を持ってもらえるように
考えます。ま、時間はかかりますけど、それしかないんですよね。」
と、深くうなずいていました。

 来月までに実行することを一生懸命メモするHさんの姿に、私も、
必ずや成功することを約束せずにはいられませんでした。

(*) いらち=いらいらする、せっかちという意味の方言

−end −

※レポート部分のみを抜粋して掲載しております

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