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もぐら通信 Vol.34
パンドラの箱

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もぐら通信 vol.34            2006.05.23
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  〜 目の前に起こる出来事が最良の教材 〜

■今回のテーマ:パンドラの箱

 『・・・箱を開けるとそこにはまた小さな箱があって、開けても開けて
もそこには箱があるだけ。本当は箱の中には何もないのかもしれないけれ
ど、あきらめて箱を開けるのを止めてしまったものは、決して箱の中身を
知ることはない。』

 まだ私が中学生だった頃、こんな話を聞いたことがあります。私は、こ
の話にどこか心躍るような、そしてまた、何か切ないような、そんな気分
にさせられたものでした。

 これを『パンドラの箱』と記憶していましたが、本来のお話は、ギリシ
ャ神話で、神様から決して開けてはならないと言われていた『パンドラの
箱』を開けてしまったために、箱にあったこの世に存在するありとあらゆ
る災い(疫病、悲嘆、欠乏、犯罪など)が飛び出し、人間はそうした不幸
に悩まされるようになったそうです。しかし、慌てて蓋を閉めたため、た
った1つの不幸だけは人間にふりかかることはありませんでした。それは、
未来をわかってしまうということ。そのため人間は希望を失わずに済んだ
ともいわれています。

 つまりパンドラの箱の中には希望だけが残され、それゆえどんな不幸が
起ころうとも人間は希望があったので生きてこれたというお話です。

 

 さて、前置が長くなりましたが、ついこの間もこの箱の話をふと思い出
させる出来事がありました。

 

 今年の2月からお仕事をさせていただいているお客様でのことです。
今月もゴールデンウィーク開けにお邪魔しました。このお客様では、案件
拡大を目指し、新たな営業の仕組みをつくろうとプロジェクトがスタート
し、3ヶ月が経過しようとしていました。
 ところが、実を言うと、これまでなかなかしっくりいっていないという
状況でした。

 何がしっくりいっていないのかというと、プロジェクトメンバーを決定
し、各自の役割分担も明確にし、新しいスタッフも迎え入れ、さてスター
トとなりましたが、何かが噛み合っていないような気がしてなりませんで
した。プロジェクトメンバーは、みな現業務を抱えてのことでしたが、ど
こか他人事で、自分のこととして捉えているようには見えませんでした。

 実質的には、現場を任された若手社員のAさんと実務を行う新人スタッ
フの2人でこのプロジェクトを漕ぎ出すしかない状態で、それも行き詰ま
っていました。

 また、訪問する度に”あなた方は何をしてくれるの?”そんな視線を感
じ、一緒に作り上げるものと考えていた私の心には疑問の文字が浮かばず
にはいられませんでした。

 もちろん、これは、私のコンサルタントとしての未熟さもあってのこと
でした。プロジェクトを進める上で重要な業務スケジュールや、KPI*、
マイルストーン**等の資料の貧弱さや裏付けする数値の甘さなどが、こう
した状況を招いていたとことも認めざるを得ません。その具体性の欠如が
指摘され、何度となく宿題となり、すっかり自身を失っていました。

 私は、プロジェクトを稼動させるための業務の作り込みをしなければと
いう焦りと、その業務の必要性を訴える資料の準備、そのどちらもが自分
にふりかって来る重圧と各プロジェクトメンバーが思うように機能してい
ないことに危機感を感じていました。

 おのずとお客様へ向かう足取りは鉛のように重く、心は梅雨空のように
どんよりしていました。

 

 「このままではまずい・・・」

 心のバロメーターが叫びました。

 私はまず、自分の上司にお客様の状況や自分の状態をありのまま相談し、
解決の糸口をなんとか導き出そうとあれこれ思案しました。また、過去の
資料からデータを引っ張り出したり、関連しそうなクライアントに情報を
求め、自分なりにできるだけ資料を揃え、客先へ向かいました。

 ところがどうでしょうか。

 宿題になっていた資料を提出し、説明し終えると、
「わかったよ。これを基準に考えればいいんだね。よしここを目指してい
こうよ。」
と、プロジェクトオーナーである上長が言ってくれました。

 そして、現場で一人悩んでいたAさんも自分が何をすべきか、何を目指
すのかがわかったようで、どんどんプロジェクトの中身が具体化していき
ました。

「今日はここまで決まればOKです。実務レベルの細かい準備内容等につ
いては、Aさんと一緒に作成します。」
という私の言葉に、
「じゃ、僕はここで。後はフォローをマメに頼むよ。スケジュールは任せ
るから。」
そういって、プロジェクトオーナーは会議室を後にしました。

 やっと形になったきた、何かが回り始めてきたその手ごたえを感じ、私
もAさんにも笑みが浮かびました。

 

 客先を後にし、帰路のバスの中で、私は不思議な気持ちでいっぱいでし
た。昨日まであんなに不安で、後ろ向きな気持ちに押しつぶされそうだっ
たのに、今日は次回が楽しみで仕方がないのです。
 そして、あの箱の話を思い出したのです。開けても開けも箱、でもその
箱を開けることをやめてしまったら、その箱に何が入っていたのかを知る
ことはできない−。

 箱を開けるたびに、きっとこれからもいくつもの困難がやってくるでし
ょう。そしてまた、私は何個もの箱を開けることになるのでしょうが、そ
んな自分を今は少し楽しみに思えるのです。

 

「ああ、これが箱の中身なのか。」
と、思い知らされました。それは、神話の通り、たった一つの希望のなの
だと。そして、その希望を持って諦めずやり続けることの大切さをお客様
に教えられたのでした。

 

 新しいことを始めることは、まさにパンドラの箱を開けるようなものか
も知れません。しかしそこには開けたものにしかわからない、未来が残さ
れているのではないでしょうか。

 

*KPI=Key Performance Indicatorの略語。「重要業績指標」や
「主要業績評価指標」と訳される。KPIは、プロジェクトで期待する目
標や効果に対し、その達成度合いを定量的に測定するための評価指標のこ
と。

**マイルストーン=プロジェクト管理における進捗の目安とされるもの。
プロジェクト全体の進捗は、マイルストーンがクリアできているかどうか
で判断される。

−end −

※レポート部分のみを抜粋して掲載しております

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