【Vol.59】セールスリードの運用

メールマガジン

 ここしばらくインサイドセールスの仕組みに関する内容が続きました。
そこで、今回はグッと梶を切り、インサイドセールスがもたらす変化に
ついてご紹介したいと思います。

 この”変化”とは、インサイドセールスを導入するメリットや営業的な
効果についてではありません。今回、お伝えしたいのは”働くということ”
そのものに本質的にアプローチする変化です。それを表す良い事例があり
ますので、ご紹介したいと思います。

 先日、インサイドセールスセンターを立ち上げ、丸10年を迎えたクライアント企業で、実務スタッフ向けにグループ別研修をさせていただきました。

研修の内容はモニタリング演習といい、実際の音声を題材に商談のきっかけになる顧客の発言を見極め、その意味を理解を深めます。そして、スクリプトに頼らずとも適切なアクションが取れるよう対応スキルの向上を目的とした実践向けトレーニングです。

 実は、研修を実施するに当たり、現場の育成担当者からはスキルアップに加え、スタッフのモチベーションやマインドについても確認して欲しいと依頼されました。それには大きく2つの意味がありました。

 一つは、新人スタッフの育成に対する課題があったからです。

このクライアント企業では、スタッフの勤続年数は5~7年となり、
経験も重ね、営業マン顔負けの高度な対応を実現できるレベルに到達
しつつあります。しかしながら、最近は新人スタッフの早期リタイヤが続き苦慮していました。

 そのような中、半年前に加わったスタッフが今どのような状態にあるのか、今後も継続できそうなのか知りたい様子でした。そして、離職を食い止め、後に続くスタッフとなるようどう育成すればよいか早急に解決しなければならない状況のようでした。

 もう一つは、顧客対応が作業化しているのではないかという懸念です。

営業経験がないスタッフでも業務を遂行できるよう、運用ルールを作り、
事例をパターン化し、ノウハウを共有してきました。その効果はあった
一方で、経験豊富やスタッフや知識があり機転の利くスタッフでも、
型にはめようとしがちで、本当の意味でお客様と向き合っていないと
現場のマネージャーは感じていました。

 スキルがあっても、知識があっても顧客に向き合えていなければ、
顧客の真のニーズを引出し、商談化へ繋ぐことはできません。規定の情報をヒアリングし、想定されたアプローチを万事実行できたとしても、商談化になるワケではないのが営業の難しさでもあります。

 しかし、この型にはめた対応が、非常に落とし穴なのです。
せっかく顧客が発信しているチャンスボールをそれこそ、バットの芯にあてれば、ホームランになるところを無難なヒットに留め満足しているようにも見えました。

 また、それ以前に、型にあてはめ過ぎて顧客の本当のニーズをゆがませてしまう危険性もありました。

 インサイドセールスの業務がある程度のレベルまで達成できてきたから
こその課題と言えばそうです。本当の意味で顧客に貢献することとはどういうことなのかを理解し、実践するという至極まっとうな、そしてある種、レベルの高い課題を抱えていました。

 そこで、研修では顧客対応スキルやノウハウを積むことだけでなく、
本質的にどう顧客に向き合っているかをもう一度、問うことが必要だと
感じました。

そこで、それとなく業務を通じて嬉しかったこと・やりがいを感じる
時はあるか、そして、それはどのような時かを聞いてみることにしました

 すると、5名の内4名のスタッフは「ある」という回答でした。

 「ある」と回答したスタッフは、自分や仲間が成長したり、貢献したと
思えたときにやりがいを感じることができているようでした。

 そして、その上で、お客様に役立ったその結果が商談につながることを伝え、相互理解なしにテクニカルな部分だけで商談には至らないことを理解してもらいました。

 ゆえに、ルールや成功パターンありきではなく、スタッフ一人一人が顧客の立場に立ち、素朴に、純粋に顧客のために自らが出来ることは何かを常に考えながら対応していくことの意味をもう一度、共有しました。

 そのようなディスカッションを一通りした後、ある熟練スタッフが
こういいました。

「私も最初の頃は、話せる度胸やテクニックもあったし、それで前職の
コールセンターで実績を出してきたという自負もありました。でも、それがここでは通用しないことをすぐ知りました。少し聞きかじった程度の知識では歯が立たないですし、そもそも(顧客のために)考えるということをして来なかったので、そのやり方ではダメだと悟りました。」

といい、さらに

「大変だったけど、私たちの可能性を信じ、チャンレジさせてくれた当時
の育成担当のUさんのために、頑張りたいと、がむしゃらにやってきました。それが、今の自分を支えてくれていることに、改めて気づきました。
本当にしんどかったけど、自分の成長を感じられて、楽しかった時間でも
ありました。」

と語る表情に嘘はありませんでした。

 この熟練スタッフは、今では新人スタッフの育成も担う立場に成長しましたが、今の新人スタッフに対しては、自分と重なる部分も感じているようでした。
また、改めてこのような気づきやチャレンジが不足しているので、
そのようなきっかけを作りたいとも言っていました。

研修のまとめとして、アンケートに各自今後の取り組みを書いて提出してもらうと、各スタッフとも、そこには自発的に、積極的に関わっていくことが宣言されていました。

 実行ベースでの変化はこれからとなりますが、研修に参加したスタッフは、自ら工夫や改善を凝らし、やりがいや楽しさ・達成感という給料以外の何かを求めて努力することの価値を再認識してくれたのではないかと思っています。

 インサイドセールスが注目されるようになればなるほど、その効果や手法がもてはやされているようですが、インサイドセールスの本当の価値はこのように”働くということ”への意識をレベルアップし、仕事に誇りと価値を感じられる人々を増やしていくかもしれません。