【Vol.53】訪問神話

メールマガジン

 今年4月に「インサイドセールスの実務」(東洋経済新報社)より本を出版させていただき、その影響もあってか、おかげさまで最近お問合せが増えて参りました。

 また、WEBでインサイドセールスと検索しますと、インサイドセールスのコンサルティングサービスを提供する会社や、インサイドセールスセンターと名打って、インサイドセールスの実務を請け負うベンダーが増えてきました。

 これは弊社にとっては、実は大変嬉しいことです。

 確かに、競合相手が増えてきましたので、私共もより一層サービスや
ノウハウに磨きをかけていかなければならない訳ですが、そもそもインサイドセールスというものがこれだけ認知され、効果を感じ始めているからこそ、今の状況が生まれていると思います。

 ですから、インサイドセールスそのものが市民権を得て、世の中に広まり、インサイドセールスを営業・マーケティングの手法とし導入する企業、またそれを支援・提供するベンダーが増え、その活動が精鋭されていくことは本当に待ち望んでいた状況なのです。

 そんな中、もうインサイドセールスを導入し、5年になる弊社のクライアント企業様でのこんな一言に、私はハッとしました。

弊社が提唱するインサイドセールスは、原則として営業プロセスの分業があり、それゆえ、インサイドセールスと対面営業を行うフィールドセールスにそのプロセスは分業されます。

 インサイドセールスが顧客接点から関係構築、セールスリードの創出を
主に担い、その先のセールスプレゼンテ―ションやクロージング等をフィールドセールスが担当することになりますが、この2つの役割の間で見えるえざる壁に直面することがあります。

 つい先日、インサイドセールスの現場をマネジメントする担当者からこんな話を聞きました。

 このクライアント企業様は、約5年前にインサイドセールス部門を設立し、実務スタッフも含み約20名体制で取り組んできました。最初は単なる接点確保が主でしたが、徐々に確度の高いセールスリードの創出や営業のリカバリーをするようになり、今期は商談化に向け個々の顧客状況により特化した対応ができるようOne-to-oneコールも強化してきました。

 しかし、そう簡単に商談化が出来るわけではありません。顧客からニーズを拾い上げ、提案のきっかけを作ることができても、具体的な商談に至るにはまだまだ道半ばでした。

 その状況に、営業は業を煮やしたのか、「やはり、コールやメールでは限界があるのではないか」と言ったそうです。

 そして、その言葉の裏側には、”顧客に会わないインサイドセールスではダメだ。
会えればなんとかなるはず”という根強い訪問神話が隠されているようでした。

 私はこれにはひどく疑問を感じました。営業自らの活動でさえ、会えない顧客を目の前にして、会えればなんとかなるとは、一体どうすればよいのでしょうか。

 とかく、これまでの営業は客先へ行ってナンボ、顧客に合ってナンボの営業スタイルだったかもしれません。しかしながら、最近、なかなか顧客が会ってくれなくなりました。

 理由は簡単です。必要な情報はインターネットなどでいくらでも自由に
得ることが出来るし、各ベンダーからの情報提供も盛んで、情報が溢れることがあっても不足することはありません。ですから、単なる情報提供やご挨拶程度の用件では会ってくれなくなってきているのです。

 そんな時代だからこそ、顧客に会う前にきちんと準備をして、顧客の
ニーズにマッチした提案ができるよう、事前の顧客ニーズのヒアリングや
検討のポイントなどをインサイドセールを活用して把握しておく必要が
あると思っています。

また、インサイドセールスでは、顕在化した顧客ニーズはもとより、
まだ顧客も気づいていない潜在的なニーズをも拾い上げ、そのタイミングを図り、確実にアプローチしていくことで商談化することが実現できると考えています。

 それゆえ、当然中長期的なスパンでの活動になりますから、今日、明日、あさってのの商談になるものは出てきません。

 今、商談化が伸び悩んでいるのは、数年前の少なくとも半年から一年位前の施策やセールスシナリオに問題があったからではないかと思います。
また、インサイドセールスのみならず、顧客のニーズや検討タイミングをキャッチしていながらも、それを活かせていないという事実も散見されていました。

 その状態をもってして、直接会えないインサイドセールスには限界があるという意見には、どうしても首を曲げたくなってしまいました。

 商談化への道のりは簡単ではありません。でも、会ったからといっても
それは同じことではないでしょうか。

 その証拠に、一度訪問したものの、そこでフィールドセールスによる
営業活動が途絶えてしまった顧客のリテンションもインサイドセールスで行い、再スタートしたケースもあります。

 インサイドセールスそのものに限界を下す前に今一度、フィールドセールスを含めたセールスシナリオ見直しや、過去に引継されたセールスリードの見直しを是非、行っていただきたいと切に思います。

きっとそこには、取りこぼされた改善のヒントが隠されているはずです。