【Vol.89】涙の裏側にあるもの

メールマガジン

 インサイドセールスが営業あるいはマーケティングの仕組みとして、
認知され、その効果を実感し始めた企業が増え、今年はインサイドセール
スに関するセミナーなどをあちこちで見るようになりました。

 インサイドセールスといっても、そのスタイルは大きく3つのモデルに
分類されるかと思います。

 1つは、インサイドセールスが顧客接点から受注までの一切の営業業務
を担う「ワンストップ型」です。IBMドットコムセンターやデルなどで
展開されるモデルです。

 2つ目は、これが最も多いのではないかと思いますが、提案や受注活動は
これまで通り対面を通じて営業活動を行うフィールドセールスと電話や
eメール等を活用して顧客との接点づくりから提案前までのいわゆる見込み化
を行うインサイドセールスとで営業プロセスをわける「分業型」です。

 そして、3つ目は、インサイドセールスとフィールドセールスがコンタクト
の手段は異なれど、プロセスによって分業をするのではなく、同一の顧客を
同時進行で一緒になってフォローする「ハイブリッド型」です。

 このいずれのモデルでも、インサイドセールスを始める際、そのリソースを
社内に持つ(=内製化)か、それともアウトソーシングするかという選択が
あります。

 アウトソーシングする場合は、今回の内容はあまり参考にならないと思い
ますが、インハウスで行う場合は、必ずといって直面する課題であり、イン
サイドセールスに限らず、各種アウトバウンドセンターやコールセンターでは
常にある課題かもしれません。

 弊社は、主に、インサイドセールスの分業型のモデルの支援・提案を行って
いますが、仕組みの構築に必要なシステムを提供するのみならず、インサイド
セールスの業務設計から実務担当者の育成・教育を行っています。

 今回は、継続して支援していく中で見えてきた、インサイドセールスの実務
の現場から育成に関するお話です。


 弊社のコンサルタントは、原則、半年から1年スパンで支援を行っています。
時には契約更新し、トータルでは3年程度、長いクライアントでは、10年にも
及ぶクライアントもいます。

 このように中長期的な支援を行っているからこそなせるのかもしれませんが、
育成においては、こうした中長期的な視点が欠かせません。

 先日、とあるインサイドセールスセンターでスタッフの個別面談を実施してき
ました。内容はといいますと、1人1人、そのスタッフの音声評価を行い、
トークマナーやヒアリングの仕方、顧客の声の理解やライティングなどコールに
関する内容の他、知識の補てんやマインドの持ち方など、多岐に渡ります。

 ただし、個別面談の時間は20分〜30分程度で、多くのことを伝えるわけには
いきませんし、ゆっくり話し込む時間もありません。音声を一緒に確認しながら、
今、このスタッフに必要なことは何かを、厳選し、メッセージとして伝えます。

 コール上の課題や知識に関する内容は、クライアント全体の課題感とほぼ
同じなことが多いため、結果的に共通した内容になることもありますが、同じ
課題であってもそれを解決するためのアプローチの仕方や与えるメッセージは
変わってきます。

 あるスタッフにはテクニカルな内容を伝える場合もありますし、また別の
スタッフには営業知識を解説する場合もあります。またとあるスタッフには、
まずは悩みや相談を聞き、それに答える場合もあります。

 中長期的に関わっていると、そのスタッフ一人ひとりのスキルや資質以外にも
思考の癖やマインド、そして現在の状況(ex.成果が出ているときとそうでない
時の受け取り方)などが今の課題にどう関係しているのか、なんとなくわか
ってきます。そうしたことをひとり一人の特性や課題感を加味した上で、今、
伝えるべきことをを見出していきます。

 このように、日々の一斉研修や現場でのフォローアップと今回のような個別
面談などを通じてスタッフを育成していくわけですが、その成果が見えた瞬間が
ありました。

 センター全体的にはヒアリングの質も上がり、成果も前年度アップではあった
ものの、個別のスタッフをみていくと、どうしても伸び悩んでいるスタッフが
いました。

 実際に研修でも、浮かない顔をし、顧客との会話も自信なさ気で、実績的にも
良い方ではありませんでした。

 定期的な面談では、決して焦らせず、欲張らずに、1つずつ前に進めるよう、
アドバイスすることを心がけました。しかし、顔が晴れることは無く、育成する
側も、せめて本人の心が折れることがないよう、祈るような気持ちでした。

 それから、数か月たったある日、一斉研修での彼女の様子がいつもと違って
見えました。前を向き、少し余裕のある雰囲気で研修を受けているのです。
研修の合間の休憩時間には、同僚らと明るく話す彼女の声が聞こえてきました。

 「もしかしたら、何かをつかんだのかも・・・。」そんな予感がしました。

 そして、定例の個人面談。その彼女の音声を聞いた時、嬉しい予感は的中。
不安げな彼女ではなく、きちんと顧客に向かい、自分の言葉で顧客に質問をし、
理解を深め、さりげなく顧客に良かろうと思うことを提案する姿が、
そこにはありました。

 しばしば、音声の途中で、改善点を話すこともありますが、その時は、
最後まで彼女の音声を一緒に聞きました。

 そして、顧客との会話が終わった時、
「よく頑張りました。よくここまで逃げずに、自分と向き合ってきましたね。」
と、思わずそんな言葉が出ました。

 すると、彼女は、
「有難うございます。そんな風に言っていただけるなんて・・・」と、
涙を流していました。

 そして、同じグループで日々彼女のそばでフォローするリーダーも一緒に
涙していました。

 この涙の裏側にあるものは何かー。

 同じことを伝えても理解して、すぐ実行に移せる人、そうでない人がいます。
理解はそれほどできていなくても、行動できてしまう人もします。さらには、
理解もできなければ、実行もできない人もいます。本当にそれぞれです。

 その結果、当然、成果にも差が出ます。就任から3か月でメキメキと成果を
出す人もいれば、1年経って、芽が出る人もいます。
 
 この違いは、何でしょうか。

 弊社では、実際の研修でもスタッフのみなさんにお伝えしていますが、
能力の差ではないと思います。多少の差こそあれ、大きな差ではないと思って
います。

 では、何の違いか。

 自らの課題に向かい、自分を信じて諦めずに、チャンレジした結果だと
思います。日々の業務で、何度も失敗しながらも、アドバス受けたこと、
研修で学んだこと、同僚がうまくいた事例などをトライしたその結果です。

 そうでなければ、あの安定感はないのです。それは実際のコールでも、
日々の表情にからにも表れます。

 実はこうしたことは、レアケースではないのです。

 他にも、ずっとインサイドセールスの業務に今一つ納得感がなく、本来の
ポテンシャルを発揮できていなかったスタッフが、大きく変わった瞬間が
ありました。

 その理由を聞くと、
「インサイドセールスはコンシェルジュだと思うようにしたんです。」と。

 これは、インサイドセールスのスタンスについて研修で伝えたことでした。

 だいぶ前の研修の内容でしたが、何度も業務をしながら、以前伝えたこと
の中から彼女なりに辿り着いたどころだったのでしょう。

 さらに、インサイドセールスではスキル評価も評価基準を設けて、定期的に
行っていますが、その結果が不本意だったようで、ちょっとすねているスタッフ
がいました。

 そのスタッフが、ある研修の後に、私が待機している部屋にやってきました。
そして、個人面談の時のアドバイス内容について、質問がありました。

 そこで、いくつか補足をした後に、私はこう付け加えました。
「成果が出ている人が、表彰されたり、張り出されたりしているけど、そこに
名前が載っている人も、載っていない人も頑張っているんだよね。名前が載って
いないからといって、頑張っていないわけではないんだよね。」と。

 すると、そのスタッフの瞳から、ポロポロポロ・・・と、大粒の涙がこぼれ
ました。普段から多くを語るスタッフではないですが、今までの苦しさや
もがきを表現していました。

 インサイドセールスの実務スタッフは、第一線で顧客と接し、顧客に対する
貢献と組織に対する貢献に向けて、本当にギリギリのところで努力している
と思います。

 その結果は、確かに一定の評価指標の中ではどうしても序列ができますが、
誰でも、貢献したい気持ちやそのスタッフそのものの存在価値に序列はないと
思います。

 そんなことを感じながら、日々奮闘するインサイドセールスのメンバーと
一緒に成長していく楽しみが現場には溢れていると思います。

 涙の裏側にはそんな感動があるのです。