【vol.94】 ヒアリングを阻むもの(1)勝手がわからない

メールマガジン

 前号の配信から少し時間が空いてしまい、大変失礼致しました。

 2017年度がスタートし、これまでよりもいっそう各種企業様でのインサイドセールスの取り組みや事例を目にするようになりました。また、それに呼応するように、インサイドセールスに関するコラムやセミナー等も非常に目立つようになってきました。

 このように、インサイドセールスの隆盛は目覚ましく、いよいよ成熟期に入ろうとしているのかもしれません。そうした盛り上がりもあってか、弊社へのお問い合わせの内容も、インサイドセールスの仕組みや在り方とそのものよりも、インサイドセールスを独自で始めたが、このやり方が合っているのか、もっと成果を出すためにはどうしたらよいかという、実務寄りのご相談に変わってきました。

 さらに、インサイドセールス業務をセンター化している場合、インサイドセールス業務を担うスタッフの評価や育成に関するご相談も増えております。

 とりわけBtoBにおけるインサイドセールスは、法人ビジネスにおける理解(会社組織や意思決定プロセス等)を理解しておく必要があり、商品知識の他にも業界や業務知識、そして営業スキルといった総合的なスキルが必要になります。

 これらをある程度パターンに落とし込み、プログラム化し、各自のセールスシナリオに組み込んでいくわけですが、1つ1つのアプローチは人が行うことですから、当然、差は生じます。それが、スキルの差、経験の差、知識の差、マインドの差、様々な要素が絡みます。

 しかしこれは、何もインサイドセールス業務に限った事ではありません。Faceto Faceで行う一般的な営業(弊社ではフィールドセールスと呼ぶ)でもこうした差は当然あり、それらは実績や成果での差でという意味で評価されて来ました。 

 フィールドセールスは一般的に成果を重視し、そのプロセスを問われる事はあまりないので、営業活動そのものが個人の力量に頼る、属人的な世界であったと思います。こうした属人的な営業がいかに非効率で生産性が乏しく、組織としてのバリューを十分に発揮できていない理由であり、それを解決する手段としてインサイドセールスを提案してきました。 

 インサイドセールスは、単なる内勤営業ではありません。 インサイドセールスの実務担当者が行うことは、顧客情報を分析した結果から企画されたコールプロモーションやメールプロモーションです。MA(マーケティングオートメーション)などのデジタルマーケティング等から得られた情報もすべてインサイドセールスのアプローチに関連します。 

 もちろん、実際の顧客とのコンタクトの場面では、前述した様々な知識やスキルをフル活用して、顧客ニーズをとらえ、商談機会につなげていくため、セールスシナリオや各プロモーションの質に加え、こうしたインサイドセールスに従事する人そのものの能力も、効果的な営業活動となるための重要な要素です。

 だいぶ前置きが長くなりました。

というわけで、前回は、そのインサイドセールスの実務担当者がまさに顧客へアプローチの基本的な行動であるヒアリングについて触れました。 

 ヒアリングという行為は、「聞く」や「聴く」ということですが、これは、意味としては尋ねる、耳を傾ける、理解するということになります。弊社ではそれに「効く」と「利く」という意味を追加して考えています。 

 「効く」は効き目がある、効果があるという意味であり、「利く」は役立つ、便利である、またそういった機能のことを指します。つまり、情報として聞いた事を、顧客にとって役立つ何かに変えて、提供すれば、それは顧客、「効く」と「利く」になっていく。だから、より顧客は私たちに期待し、情報を与え、相談する相手へと関係が進化していくのだと思います。少し言い方を変えますと、顧客にメリットを感じさせるようなヒアリングを行うということです。

  そこで、課題となるのが、このヒアリングです。顧客の利用状況や商材に関する興味や検討度合についてヒアリングをしたいが、なかなかその情報が聞き出せないという課題です。 

 ヒアリングスキルというとそのテクニック論を求められるケースもありますが、実は、ヒアリングそのものにテクニックというほどのことはあまりないと思っています。文字通り聞けばいいのです。質問をすればいいのです。 

 そもそも、ヒアリングに関する多くの課題は、まず、このヒアリングをしない、質問ができないことにあります。やり方以前に、実行しないのです。勿論、実行しなければ、情報は得られません。

 ヒアリングは実行すれば、何らかの回答が得られます(回答を拒否するという態度も含めて)。そして、その結果から次のアクションが定まります。1つの質問ですべてが決まるわけではなく、質問の答えによってまた次の質問が決まります。そうして、ヒアリングを繰り返すことで、顧客が考えていること、置かれている環境などがリアルになり、顧客が希望することや期待すること、つまり顧客のニーズにピントが合ってくるのです。

 ですから、ヒアリングを実行できていれば大半の課題はクリアしているのです。ヒアリングの結果によってどう話を展開していくかについては、リアクションの問題です。ヒアリングが実行できているのであれば、課題は、リアクションにあると思います。このリアクションはインサイドセールスの実務の中で非常に重要なポイントなので、また改めて解説したいと思います。 

 話が少し反れましたので、元に戻します。

 前回(2017年3月号)では、このヒアリングを阻むものとして3つあるというところまでお伝えしました。繰り返しになりますが、その3つとは、

   1)勝手がわからない

   2)知識の不足

   3)心のブレーキ

 です。

 今回は、まず1つ目の「勝手がわからない」ということについて、解説して参ります。

  先ほど、ヒアリングの大きな課題は、「ヒアリングそのものをしない、実行できない」ことであると言いました。では、なぜ、ヒアリングが出来ないのでしょうか。

 それが、この「1)勝手がわからない」にあると考えます。これは、具体的に言いますと、

  ①今(いつ)、質問するべきなのか。   

  ②どう、質問するのが適切か。   

  ③質問して良いことなのか、悪い事なのか判断が付かない。

ということではないかと思います。これらも、1つずつ解説していきましよう。

 しばしば現場から、「話の流れやタミングをどう作るか、(ヒアリングの)きっかけをつかむのが難しい」という類の質問が挙がります。つまり①の問題です。

 大概、コールプロモーションの場合は、台詞調にしたコールスクリプトを用意しますので、文言の他、流れも含めてそこに記されているはずですから、その通りに話せばいいのです。それでもこのような質問が挙がります。 

 その理由は、相手の状況を理解できない、読めないからというのがあると思います。もちろん電話などの場合は、相手の状況が物理的に見えません。だからといってまったくわからない訳ではないと思います。これは架電する相手の業種、業務内容、立場などによっても少し変わりますが、大体、法人へのアプローチであれば、朝礼やミーティングなどを行っているような始業時間は外してアプローチするはずです。とすると、概ね9時半~10時頃、昼休み時間を外して、夕方17時位まで通常コンタクトする時間帯です。そこで、電話にターゲットパーソンが出たのであれば、それはまず会話可能ということと判断してよいはずです。 

 そして、ビジネスでの電話は短く済ませることが鉄則です。そして、会社にかかってくる電話は業務であり、ドンドン業務を処理していかなければなりませんので、こちらも用件を要領よく伝える必要があります。そして、聞くべきことは聞いて、顧客も答えるべきことは答えるし、そうでないものは答えないという判断をすぐさましていきます。ですから、変に躊躇する必要はなく、ストレートに聞いていけば良いのです。 

 訪問した場合などは、多少、最初のご挨拶や世間話もありですが、電話の場合は、すぐさま用件で良いのです。勿論、最低限の名乗りは必要ですが、挨拶や世間話は不要です。まず、このことが体感的に理解できているかというのがあると思います。 

 また、逆にこのドンドン業務的に処理をしていく法人のスピード感を取り違えて、いつも忙しいので手短に済ませなければならないという強迫観念があると、ヒアリングすべきこともせずに会話を終えてしまう。もしくは、相手にヒアリングの許可を得るアプローチを挟み過ぎて、かえって要領が悪く、顧客にイライラさせてしまうということもあります。いずれにせよ、法人におけるアプローチの場合、勝手がわかっていれば平然とヒアリングできることが実は多いのではないでしょうか。

 次に②の「どう質問するのが適切か」についてですが、スクリプト作成者とオペレーションする人の間に知識や業務経験のレベルの差がある場合、使う言葉のレベルに配慮する必要があります。スクリプトで採用する言葉が顧客のレベルに合っている場合は、その言葉を使った方がより伝わりやすいのですが、その場合は、きちんと意味を解説し、別の言葉での表現も伝えて置く必要があります。

  言葉は、生き物ですから、その人が理解していない言葉は、話しているではなく、読んでいるになってしまいます。こうなると、「分からないままにただ言っているだけ」という印象になり、返答することを顧客が躊躇することにもなりかねません。また理解させないままに、顧客にコンタクトさせているという企業に対する信頼感も危うくなり兼ねません。 

 ですから、質問の意図はもちろんの事、その質問として使っている言葉の理解とそして、そこから得られた顧客の回答がどう営業的に関係するのかまでをきちんと理解させておけば、この問題もクリアできるのではないかと思います。 

 そして、③の「質問して良いことなのか、悪い事なのか判断が付かない」についてです。ヒアリングの中には、少し立ち入ったことを質問することもあります。また同じ質問でも、顧客によって、立ち入ったと感じられる場合とそうでない場合があります。だだそのような機密性の高い情報でも、正しくステップを踏めば、問題なくヒアリングできることがあります。ただ、このステップを間違えた、もしくはそのステップを踏まなかった場合に、急に顧客の態度が冷たくなったり、場合によってはクレームに発展したりすることがあります。 

 質問の機密性や難易度といったことも整理し、インサイドセールスの実務担当者に理解させておくことでこの課題も軽減できると考えます。自らが判断できればもちろん問題はないのですが、判断できない場合、もしくはその判断が誤っている場合、効果的なヒアリングにはなりませんので、このような工夫が求められると思います。

 さて、ここまでで、ヒアリングに関して参考になったことや納得感はありますでしょうか。

勿論、ここに挙げた原因以外もあるでしょう。また提示した対策を既に取っているが改善しないというケースもあるでしょう。 ヒアリングが上手くいかない理由は複合的なものです。

 次回は、ヒアリングを阻むもの(2)「知識の不足」をお届けます。インサイドセールス業務に必要な知識とヒアリングの関係について掘下げていきたいと思います

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