【vol.95】 ヒアリングを阻むもの(2)知識の不足

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 インサイドセールスにおいて「ヒアリングスキル」最も重要なスキルといっても過言ではないでしょう。Face to Faceでコミュニケーションをはかる場合でも同様かとは思いますが、相手を知らなければ、良好な関係構築も効果的な提案もまずは無理ではないでしょうか。 

 相手を知るために、いくつかの質問をしていくこと、それがヒアリングです。また、ヒアリングを通じて、相手が意識していなかったことを顕在化させ、それを具体的な行動へと発展させる役割も有ります。コーチングと言われるような場合のヒアリングです。 

 このヒアリングが上手に展開できることは、顧客を知るということに留まらず、相手に即した提案をする際にも、押し付けがましいようなことはなくヒアリングを通じた提案は、さりげなく、相手へ寄り添いながら訴求をすることにもなります。 

 それだけヒアリングの効果は誰もが感じている事でありますが、それが上手にできないという悩みはインサイドセールスにおいて重大です。

  弊社では、インサイドセールス担当者はもちろんのこと、現場のマネジメントをするスーパーバイザーやトレーナー向けにも研修を行っていますが、ヒアリングスキルに関する項目が実は一番多いのです。それくらいヒアリングは奥が深く、いくつかのステップを踏みながらレベルアップしていくものであると思っています。

  さて、そのヒアリングを阻むものとして、前号に引き続き今回もお送り致します。

今回はシリーズ第3回、ヒアリングを阻む3大理由の2つ目、「知識の不足」について解説致します。

  前回、「(1)勝手がわからない」でも少し触れましたが、BtoBにおけるインサイドセールスでは、法人や会社組織に関する理解がないと勝手がわからず、有効なヒアリングが出来ないとお伝えしました。 

 実際に支援しているクライアント企業様でも、いわゆるコールセンターのような営業経験がない(もしくは少ない)方を構成メンバーの中心となる場合、営業経験の有無よりも、実はこの法人や会社組織に関する理解が乏しく、結果的にターゲットパーソンと話がかみ合わないということがあります。これはビジネス感覚が希薄であることが1つ理由にあります。ビジネス感覚というものは知識ではないのでは?とお思いになるかもしれません。 

 しかし、現場で経験をある一定期間積み、独自にビジネス感覚が育つのを待つというような悠長なことはしていられません。また、プロパーの新入社員であれば、それもある程度は許されるかもしれませんが、2週間から最長でも1ヵ月程度で顧客対応していくインサイドセールスの実務担当者には、そうは行きません。 

 そこで、ビジネス感覚も知識で賄うという手法を取っています。 

 知識というと商品知識や業界知識など、専門性のあることだけを知識として習得させる傾向があるように思います。しかしこれでは不十分であると考えます。恐らく、これは知識をどう活用するか、何のための知識なのかというところからもはや違ってくるのだと思います。

 ただこの必要なスキルをきちんと定義できていないと、それに紐づく知識も定義できないので、その人頼みの、育成とは名ばかりの自己成長に委ねるような状況になってしまうのです。 

 そして、もう一つ、育成における大きな課題は、育成に関わる担当者自身もコーチングとティーチングが整理されておらず、コーチングすべき課題においてティーチングを行ったり、また業務ルールや単なる商品知識を中心としたティーチングばかりを行ったりするあまりに、知識として理解はするものの、実際のコミュニケーションでは活用できない、つまりスキルに展開できないという状況に陥っていることです。つい、ルール化したがる育成担当やスーパーバイザーがそれです。 

 よって、今回は、まずインサイドセールス業務に必要な知識を整理し、それらをどのように授け、ヒアリングスキルへと展開させていくか、その大まかな流れをお伝えできればと思っております。

 冒頭の法人や会社組織に関する理解は、BtoBでは必須ですが、ではBtoCのビジネスモデルであれば当てはまらないかと言えばそうではありません。自身が働いている組織や役割を理解するのに役立ちます。また一般消費者相手とはいえ、対象にもよりますが、その個人もどこかの組織に属していることが多いので、ある程度のビジネス感覚を持ち合わせている場合が多いはずです。となると、顧客を理解する点で、これから示す知識は、BtoBBtoC問わず、あらゆる営業に関する側面では有効であると思っています。 

 では、そのインサイドセールス業務に必要な知識ですが、大きく以下の4つと考えます。

  ①法人・会社組織に対する知識

  ⇒組織体系(法人の種類)、意思決定プロセス、予算確保、利益とは、一般的な部署と業務内容 等。

 

 ②営業知識

  ⇒一般的な営業プロセス(顧客接点から受注、アフターフォローやアフターセールスの流れ)、顧客の決定要因や阻害要因に関する理解、営業活動の優先順位の付け方、見込度の物差し、BANT条件 等。

  ③業界・業務知識

  ⇒自社が所属する業界はもとより、顧客の業種が多岐にわたる場合は、製造業、卸売業、サービス業などの違い、それに伴う組織の在り方やニーズ、ビジネストレンド、専門用語、業界用語 等

  ④商品知識

  ⇒取扱い製品のラインナップ、スペック、価格帯、競合他社製品 等

  これらを提示すると、顧客の業界が異なっても販売するものは同じなので、特に業種別の対応や売り方をしないので業界業務知識は不要ではないかといわれることがあります。

  もし、自社のサービスを単に説明するだけならそうかもしれません。しかし、販売したい商品がその顧客にとってなぜ導入するとメリットがあるのか、その利用シーンや導入後のイメージを持ってもらわないと潜在的な顧客を顕在化させることはできません。

  すでに検討段階あり、あれこれ下調べが終わっている顧客であれば、先方から質問があるかもしれません。その場合は商品知識の方が重要になるでしょう。しかし、インサイドセールスはもっと手前の、まだ検討していない顧客や自社にベクトルが向いていない顧客を醸成していくことが役割の1つでもあります。となると、実は、インサイドセールスにおいては④よりも③が非常に重要なのです。

 そして③の業界・業務知識を理解するには当然①の法人・会社組織に対する知識は基礎知識となり、営業的な視点があるとそれがスキルとして展開しやすくなるというわけです。

  さて、ここまでOKでしたら、次にこれらの知識をどう授けていくか、どう理解させていくかということがみなさんの関心事項ではないでしょうか。知識の習得について解説して参りましょう。

  方法論としては、知識ですので、ティーチングによってと言いたいところですが、ヒアリングスキルや提案・訴求のためのトーキングスキルへ展開することを前提として考えると、コーチング的なスタンスで教える、知識を授けることになります。

  おさらいですが、ティーチング(teaching)とは、簡単に言えば正解を理解させることです。コーチングは自発的に考え、自ら行動できるようにすることです。ティーチングには正解はありますが、コーチング(couching)には正解はないです。その代りにコーチングの場合は最適解というものが存在します。この場合はこの方がよいだろう(more betterというものです。

 自発的な行動なら何でも良いというわけでもないので、組織として目指すべきところに向かうべく行動や対応であることが前提です。また組織が対応しうる範囲で、顧客にとって最善の対応が最適解ともいえます。ですから、Aという顧客にはそれでよかったが、Bという顧客には違う対応がベターということも日常的に発生します。ゆえに、その最適解を導けるよう知識を活用できる人材に育てることが知識におけるコーチングでると考えます。 

 つまり、知識を知識のままにせず、顧客対応の場面で使える知識にすることが、結果的にヒアリングをスキルを上げることにつながります。

 では、どうやって使える知識として授けるのか、また知識を知識に留めずスキルへ展開させるのかー。 これには4つのステップがあります。1つずつ、見ていきましよう。

 

○第1ステップ:習得したい知識に触れさせ基本的な理解をさせる。

 まずは、習得して欲しい知識の基礎的な内容や専門用語をインプットさせます。インプットできたかどうかは筆記テストなどを用意して確認するとよいでしょう。そしてテストの結果からインプットできていない点や誤った理解をしている箇所をチェックし、ティーチングを進めます。(この段階はまだティーチングで良いです。)

 ○第2ステップ:インプットした知識を自らの言葉で説明させる。

 インプットした知識が、相手に通じるかということを意識させます。現段階では、ロープレというよりは、発表形式(1対多)でよいでしょう。とにかく自分の言葉で説明させ、より顧客対応の現場で通じる練習をさせます。ここでロープレではなく、発表形式にするのは、説明する相手が複数の方が、相手の理解レベルが様々で、自分の説明が分かり易かったかどうかを判断する(あるいは感じ取る)ことになるからです。もし、ロープレなどの場合、相手がそのことに精通していると、説明する側の理解が曖昧でも、汲み取って理解しようとする傾向があり、相手に依存してしまいます。これでは、理解が深まりません。よく知らない相手にでもわかりやすく説明することができること、少し状況が変わっても理解が出来る力を養います。自分の理解に留めず、相手に理解させられる知識へ展開します。

 ○第3ステップ:ロープレまたはOJTで習得した知識を活用する。

  さらに、次のステップでは、ロープレやOJTなど実際のコミュニケーションに近い状況で知識を活用させます。顧客の理解力や知識レベル、シチュエーションによって求められる知識の深さと説明の仕方などが異なるようにするとよいでしょう。そして、習得した知識が活用できるかどうかを確認したり、知識がヒアリングに役立つ体験をしたりしながら、能動的に知識を得たいとなるよう動機付けを行います。なお、ロープレの前に知識を要するような設定をさせディスカッションし合うというのも悪くはないです。ただ、ディスカッションが誤った方向に進んだ時、修正する人間が必要であり、それなりのスキルを持った良いファシリテーターがいないとうまく作用しないことがあります。その点がクリアできればディスカッションで様々なシチュエーションを想定しながら理解を深めることもよいでしょう。

 ○第4ステップ:フィードバック&フォロー。

 ロープレやOJTでの反省点や知識における不明点(不足している点)を挙げさせます。理解していないことは何なのか、理解が誤っていることは何かをセルフチェックできるよう促します。なかなか不明点を挙げられない場合は、育成担当者は対話によって、引き出していきます。まさしくコーチングです。

 ここでの注意点は、育成する側が先に答えを言わないことです。自分で分からないことを明らかにできる力を養うことが何よりも重要です。知識においても修正や補足するべき点が理解できれば、解決策が見出しやすく、育成担当者の手離れがよくなります。またセルフチェックの結果、自分で補習したり修正したりすることを促し、正しくできれば理解のスピードは各段に早まり、結果として成果が出やすくなります。

  このように知識の習得を通じて、自ら学び、自ら解決できる人材に育成していくことが可能なのです。一見知識という暗記するようなイメージを持ちやすいですが、暗記するのは用語などであり、どれだけ理解させるかが重要です。そして、理解することが出来れば、たとえ専門用語が出てこなくても、実際のコミュニケーションでは通じることが多いのです。

 ここまでのプロセスを見てもお分かりの通り、もはや第3、第4ステップは知識を使うシーンを用意していますので、そこで合わせてヒアリグやトーキングのスキルも試すことになります。

 さて、ヒアリングを阻むものとして連載していますが、知識の不足がヒアリングを阻む原因として挙げているのは、スキル以前に、知識が非常に表層的できちんと理解しておらず、そしてそれを本人も自覚しているため、断片的な知識と不安によりヒアリングが出来ないと感じています。

 もちろん非常に深い知識がありつつもヒアリングが上手くできないケースもありますが、それでもなお多くの場合は、その知識に偏りがあります。もう少しわかりやすく言いますと、先に挙げた顧客を理解するための知識が不足し、商品知識(しかも自社の商品に限定される等)だけは良く理解しているなど知識にも偏りがあり、土台がしっかりできていないことが原因ではないかと思います。

  そこで、今一度考えていただきたいのです。知識は一体何のために必要なのでしょうか。

 商品を提案や訴求するために必要な知識はここで列挙した4つの知識+αのような気がします。少なくともインサイドセールスでは、まずは顧客のニーズを把握し、自社の商材が当てはまるかどうか、タイミングはどうか等を確認し、見込み客をあぶりだしていきます。または、まだ検討段階にない顧客に対しては、中長期的な視点で関心をもっていただき、ゆくゆくは検討してもらえるよう醸成を行うために、顧客に必要なボリューム感やレベル感で情報提供などを行うことになります。

 ですから、まずは顧客を理解するために必要な行為がヒアリングであり、理解するために必要な知識が今回のつの知識なのです。

  ヒアリングはスキルですが、この大半は知識で賄えると思っています。もしそうであれば、スキルや経験を積ませるよりはるかに体系的に育成できます。また、個人の資質で片づけることなく、もっと現場に必要な知識は何かを整理し、計画的に知識の習得を実践いただければ、確実にヒアリングスキルは上達していくでしょう。

 ということで  次号は、本シリーズの4回目、「ヒアリングを阻むもの(3)心のブレーキ」について解説して参ります。お楽しみに。

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