【Vol.103】インサイドセールスは目新しいことか?

メールマガジン

 このところ新規のお客様から立て続けにお問い合わせが入り、インサイドセールスも成熟期に入ったのかと思う今日この頃ですが、現場に赴くと待っていたのは十数年前とほぼ変わらないお客様からの質問に、まだそこまでではないかと思い直したりしています。

 弊社は自らの実践ノウハウをもとにインサイドセールスを仕組み化し、営業プロセス分業型のインサイドセールスコンサルティング専門会社として18年目を迎ますが、創業当初と少し異なることは、MA(マーケティングオートメーション)やデジタルマーケティングとの連携が増えてきたということです。

 その一方で、そうした仕組みやツールを取扱う専門の部署ができても、デジタルマーケティングのツールを導入しても、弊社に向けられる相談や質問に大きな変化はありません。

 その理由として、インサイドセールス自体が非常にシンプルでスタンダードな仕組みだからではないかと思っています。仕組といっても、特別なことは何もなく、至極「当たり前のことを当たり前に」行っているだけなのです。

 では、その当たり前の事とは何か、インサイドセールスの土台となる視点について考えてみたいと思います。

 

■目新しさはない、それがインサイドセールス?

 といいますのも、弊著「インサイドセールスの実務」を最近になって読んでくださる方も多くいらっしゃるようで、出版から5年が経とうとしていますが、某大手通販サイトの書籍部門ランキングではここ数か月の上昇は目覚ましいものがあります。その結果、レビュー数も増え、賛否揃ってまいりました。

 そこで、「否」に入るレビューを読んでみると「目新しいものが無かった」ということで、低い評価をいただきました。これには非常に同感で、何一つ目新しいことはないというのは誰よりも私たちが感じていることだからです。

 営業的な課題に多くのページを割き、具体的なインサイドセールスの構築手順や注意点、人材の選定や運営方法なども特段、目を見張るものはありません。

 もし、十分にインサイドセールスを実践し、成果を上げていらっしゃる企業やインサイドセールス担当者がさらなるレベルアップを期待し弊著を手に取っていただいたとすれば、期待外れかもしれません。それくらいインサイドセールスの中身は非常にシンプルで地道な活動の連続なのです。

 さりとて、ここで、なるほどそうかと改めて思うことには、この当たり前のことをどれだけ実践できているか、これがインサイドセールスというモノへの理解とその成果に直結するのではないかということです。

 それは、何もインサイドセールスに限ったことではなく、リアルの営業活動やマーケティング業務でも共通することではないでしょうか。では、その当たり前の事とは-。

 

■改めて問う、ソリューション営業とは

 最初に営業の在り方について少し考えてみたいと思います。

 インターネットなどの普及により顧客が容易に情報を得ることが出来るようになりました。その結果、営業は単なる御用聞きや情報提供者ではなく、一歩進んだ提案型の営業スタイルが求められるようになりました。いわゆる「ソリューション営業」などと呼ばれるそれです。

 ソリューション(solution)というその言葉は「問題解決」という意味ですが、問題解決するための手段やツールを指すようにもなり、ソリューションは提供商品やサービスをも含めた意味で使われています。営業現場で「ソリューション営業への転換」が叫ばれるようになってから十数年は経つと思いますが、果たしてどこまで実践出来ているでしょうか。

 多くの企業がこのソリューション営業なるもの掲げていますが、蓋をあけてみると実態はなかなかそうではないようです。名だたる企業であっても旧態依然の御用聞き営業や一方的な商品説明、顧客ニーズを踏まえているとは言い難い営業担当者個人の得意分野に偏った提案活動が横行していることは少なくありません。

 もちろんこれはすべての企業、すべてのクライアントがそうだということではありませんが、ソリューション営業への切り替えはそうたやすくないという実態ではないでしょうか。

 原因は、そもそも数多くの商品や多様な顧客ニーズを一営業担当者が網羅すること自体がほぼ不可能だからではないかと思います。とかく日本では、顧客に関することはすべて営業マターであるという認識が強く、顧客との接点創出からニーズの把握、そして具体的な提案・アフターフォローなどなんでも営業となりがちです。一世代前まではそれでも対応できたかもしれません。しかし、これだけニーズが多様化し顧客が情報を持つ時代に、営業任せでは上手くいかないことは目に見えています。

 そこで、ソリューション営業とインサイドセールスの関係ですが、ソリューション営業を行うには営業プロセスの分業が必要だということです。新規の顧客接点や顧客ニーズの把握、受注後のリセール活動などはインサイドセールのカバレッジ力と確実なフォローの取り入れられば、営業は提案やクロージング活動にパワーを注ぐことができます。より専門的な知識や納期や価格における権限がある営業ならではのアプローチを存分に展開できるようになります。

■カスタマーセントリック(顧客中心主義)

 また、今一度確認したい2つ目の視点として、リアルの営業及びインサイドセールス含めたセールス側のスタンスです。

 「売りたい」という気持ちがあまりにも強く出てしまい顧客が離れてしまったという経験ありませんでしょうか。常に営業担当者は求められる数字を達成するために戦々恐々としていることでしょう。しかし、求めていないお客様に販売することはやはり無理があります。

 カスタマーセットリック(顧客中心主義)はキレイゴトと言われてしまいそうですが、本当にそうでしょうか。また売上数字を背負っていない(ことが多い)インサイドセールスにおいてもリード創出件数などの評価指標は当然ありますから、同様のことが起こっているケースもあります。質の良いリードを出そうと躍起になるあまり、実態と乖離した情報となってしまったり、顧客満足の低下、さらにはクレームを招いてしまったりすることがあります。

 コンサルの場面でも「興味をもっていないお客様に興味を持ってもらうためにはどうしたらよいでしょうか」や「もう少し先と考えているお客様の導入時期を早めるためのコツはありますか」などといった質問を受けることがあります。みなさんはこの質問にどう思われますか。

 確かにセールスする立場からすれば、この課題に応えることができるのならそんな素晴らしい事はありません。しかし、そのような秘策は残念ながらありません。その代り、顧客が本当に必要とするタイミングや本当に実現したいニーズを早くから見定めて対応できていれば、時期を早めたり、無理に興味を掻き立てたりするのではなく、自然な流れの中で提案ができるのではないかと思うのです。

 そのためには、継続的なコンタクトと顧客が実現したいことは何かを丁寧にヒアリングし、課題解決のパートナーとして中長期的に関わるスタンスが必要ではないでしょうか。

 

■顧客反応を中心とした情報の蓄積

 さらにもう一つ、これまたSFAなどの情報管理ツールがこれほど普及した昨今においては当たり前のことではありますが、顧客情報を共有、活用できる状態であるかということです。

 過去の契約情報や案件管理などは何らかの形で管理されていると思いますが、まず、アプローチしたい顧客の情報をどれだけ持っているか、質と量の観点があります。これはある程度定量的に管理されるような情報です。そして、顧客の反応を中心とした定性的な情報、つまり履歴管理がされているかどうかです。

 定量的な情報については顧客セグメントや醸成度合の測定、トータル的な効果測定に活用します。訂正的な履歴情報については、顧客コンタクトの際に活用します。このような情報があって初めて、インサイドセールスが効果的に機能するのです。

 さて、ここまでの内容はどれも目新しいものではないでしょう。しかし、本当にそれが整っているか、活用出来ているか、出来ているかと問われた時、自信をもって回答できる企業はどれほどでしょうか。

 インサイドセールスを紐解けば、営業活動において至極当たり前のことだらけです。目新しさはないインサイドセールスですが、これらのことをきちんと丁寧に、かつ継続的に実践できれば必ずやそこに何らかの成果が待っていると確信しています。

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