【Vol.21】 チャンスボールを見極める

メールマガジン

 今回は、原点に戻り、インサイドセールスにおけるコール業務についてお伝えしたいと思います。

 ここ1~2ヵ月、コールセンター(アウトバウンド主体)の教育担当者の方とお話する機会があり、ある現象が起きていると、ご相談を受けました。

 ある現象とは、コールが無機質で会話のキャッチボールができていないということ。そして、せっかくお客様が課題めいたこと、導入に関する有望情報や興味を示すようなメッセージを発しているにもかかわらず、素通りしてしまうということです。

 営業的な視点でいえば、お客様からのこうしたメッセージは商談へステップアップさせる絶好の機会です。それゆえこのようなキーメッセージを教育担当の方が「チャンスボール」と呼んでいたので、なるほどと思い、それからというもの使わせていただいています。

 このチャンスボールは、恐らく営業経験の有無にかかわらず、見極められるものだと思います。

 ちなみ、にどのようなメッセージがチャンスボールかと言いますと「○○を検討している」、「○○の予定がある」、「○○に興味がある」などです。これなら、誰だって可能性があることがわかるでしょう。 これらは既に予定されている確定情報や興味などのポジティブな情報であるため、非常にわかりやすいチャンスボールです。

 ただ、ネガティブな表現や曖昧な表現になると、少し難易度が上がります。例えば、「○○が古い」、「コストが気になる」、「変えないといけない」となると、その課題の意味するところが理解できていないと、このメッセージがチャンスボールなのか判断がつかないかもしれません。

 さらに、判断に専門的な知識が必要になるとさらに難易度は上がります。仮に購入サイクルが平均4年であれば、最初の購入から「4~5年です。」と言われれば、買い替えのタイミングが近いと想定でき、これがチャンスボールだと見極められます。

 こう文章で説明していくと、チャンスボールを見極めるのは難しいことのように思うかもしれません。やっぱり知識がないと出来ないのではないか、営業センスがないと出来ないのではないかと・・・。

 しかし、それは違います。なぜならチャンスボールを見極めるために必要な知識とは、基本知識で十分ですし、それがなければチャンスボールに限らず普段のお客様との会話は恐らく成り立っていないでしょう。また、重要なメッセージであるかどうかの感覚的なものは、経験的を通じて吸収できるものです。

 もっと言えば、知識がなくても、お客様の声を客観的にかつ総合的に理解していえれば、「もしかしたら・・・」くらいの察しがつくことが多いものです。

 クライアント企業のスタッフさんは、半年~3年近く就業されている方々ですし、これまでも様々なプロモーションに対応し、お客様との会話を続けてきました。ですから、課題が商談のきっかけになることも、平均的な購入サイクルも既に理解していることでした。

 それでも、録音された会話を聞くと、このチャンスボールに的確に反応できていないのです。この問題を解決すべく研修のご依頼を頂戴した訳ですが、そこで、次の4つのことについてテストをしました。

 1)そもそも、チャンスボールの見極めができているのか

 2)チャンスボールから想定される顧客の状況を理解しているか

 3)チャンスボールに対し、行うべきことは何か(どう対応するか)

 4)実際のトーク例としてどのような言葉を投げかけるか

 この結果、わかったことは、チャンスボールの見極めができていても、そのメッセージから顧客の状況が想定できておらず、さらにそのチャンスボールに対し取るべき行動が分からず、トーク例が的外れになってしまうと言うことでした。就業期間の長いスタッフさんの中には、想定した顧客の状況は合っていないがトーク例だけは合っているというケースも見受けられました。

 これは、トークスクリプト(台本のようなもの)などに盛り込まれた典型トークパターンが頭に叩き込まれていて、考えなくても反射的に出てくるのだと感じました。

 会話はキャッチボールです。単にスクリプトを読み上げ、お客様の声をデータベースに残すことがインサイドセールスではありません。スクリプトは、お客様との会話を始めるためのスタートレーンでしかありません。もしくは、新人や慌てん坊のスタッフさんの為に、目的や現在地を見失わないよう、地図のような役割を果たすものです。

 インサイドセールスにおけるコールとは、お客様の状況に合わせて、追加のヒアリングをしたり、同意したりしながら、柔軟にお客様のお役にたてることを実践することです。

 チャンスボールに対応することは、それと全く同じことです。お客様の何気ない一言に敏感に反応し、さりげなく情報を提供したり、より有益な提案ができるよう、詳細にお話を伺いながら、お客様のために その時できる最大限のことをすることです。それが、お客様にとって、小気味良く、電話をもらって良かったなと思ってもらえることなのではないでしょうか。

 「人間は考える葦である」というブレーズ・パスカルの名言を思い出しました。ふとした一言から相手を慮(おもんばか)り、「・・・ということは?」と想像できる力がインサイドセールスには最も必要なのです。