【vol.96】ヒアリングを阻むもの(3)心のブレーキ 

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 夏休みも後半、スイッチョン、スイッチョンとキリギリスの鳴き声が庭から聞こえるようになりました。そろそろ夏も終わりが近づいていますね。

 さて、これまで、4回にわたりお届けして参りました本テーマの最終回。

インサイドセールスにおいて最も重要なスキルである「ヒアリングスキル」がなかなか上手くいかない。その原因は、大きく3つあります。まず1つ目は、「勝手がわからない」。二つ目は「知識の不足」。そして今回お届けする3つ目の要因として「心のブレーキ」です。

 しばしばインサイドセールスのテレセールスにおけるスキルをどうしてもテクニック論と考える方が多いように感じていますが、その多くはテクニックではなく、基本的な理解が不足していると弊社では捉えています。

 もう少し言うと、そもそも、インサイドセールスのテレセールスに必要なスキルがどういうものなのか、あるいはそのスキルを構築するために必要な知識はどのようなものなのかをきちんと定義されていないことが多いようです。

  インサイドセールスのスタイルもいくつかありますので、それによってもその具体的な中身は違ってくるとは思いますが、少なくとも、BtoBのビジネスモデルでかつ営業プロセスを分業するスタイルであれば、必要なスキルも知識もほぼ定まっていると思います。

 今回はその中のヒアリングスキルがどうしてうまくいかないのか、その主たる原因である3つ目の「心のブレーキ」について解説して参ります。

 前号でも少し触れましたが、ヒアリングスキルとは何かと言えば、「お客様に聞く・尋ねる・質問するスキル」のことです。さらにもう一つ加えると、「お客様に聞いたこと、尋ねたこと、質問したことの意味やその回答について理解する能力」です。

 聞いただけでそれが理解できなければ、情報収集できるかもしれませんが、営業プロセスを進めることは難しいです。リサーチは出来ても、その顧客に合わせたリコメンデーション(お薦め)やプレゼンテーション(提案)はできません。

 テクニック的に上手な人はある程度リサーチまではできると言えばできます。ただ、この理解が伴わないとやがてテクニックではカバレッジできないことは目に見えており、それが顧客に伝わると、どこでドアがクローズしてしまうことにもなりかねません。

 ですから、聞き方の上手さよりも、その質問やお客様の声を良く利理解して、それに見合った対応をしていくことがヒアリングスキルをレベルアップしていく基本です。

 そんな時、この理解は愚か、まず「聞く・尋ねる・質問する」という行為が出来ない。あるいは、しているようでしていないことが現場では良くあります。経験が浅かったり、十分な知識がなかったりする場合は、ヒアリング自体を避ける傾向にあります。それは、知識がないためにこちらが質問をして、そのことについてさらに質問が返ってきたらどうしようという不安に駆られてヒアリングが出来ないことが殆どです。知識がないからヒアリングできないというのは少し違うのですが、気持ちとしては分かります。これは前号では、ベースとなる知識を定義してきちんと身に着けさせることの重要性をお伝えしました。

 そして、前々号の内容になりますが、そもそも今このことをこの人に聞いてもいいのか?それがわからないといったような勝手がわからないゆえにヒアリングできないということもあります。

 さらに、心のブレーキがヒアリングという行為そのものを阻むものとして大きく影響しているというのが、今回の内容です。

 その、心のブレーキとは-。

 弊社では、実際の音声などをモニタリングし、スキルチェックやそのフィードバックなどの育成支援させていただいていますが、そうした際、なぜここでこの質問をしなかったのかをコミュニケーターに問うと、大概、その返答は2通りに分かれます。

 「お客様が忙しそうだったから」「答えてくれ無さそうだったから」「長くなるといけないと思って」という、“相手の状況を察してしなかった”という理由を語るケースがまず1つ目のパターンです。

 もう一つは、「そのヒアリングが想いつかなかった」「お客様の回答を違う意味でとらえていたので、その質問する必要がないと思った」というような、顧客の声を営業的にどう発展させるかのイメージやプロセスが理解できていなかったためという理由です。

 後者の場合は、心のブレーキではありません。今、そのコミュニケーターに不足しているスキルを知識に気づき、それが無かったからできなかったという至極、まっとうな理由ではないでしょうか。

  前者の場合はどうでしょう。自らのスキルの問題ではなく、顧客を配慮して敢えて実施しなかったといわんばかりです。もしくは、やっても無駄だから、効率性を考えて敢えてしなかったというようなものです。私は、その返答にいつも疑問を持ちます。本当にそうなのでしょうか。

 この前者の回答には、勝手がわからないゆえに誤解しているケースもあります。それと合わせて、不安や恐れが根底にあると感じています。

 もし仮に、コミュニケーターが察した通り、会議前で時間が取れないということであれば、当然、無理にヒアリングすることは得策ではありません。しかし、その場合であれば、では改めることを前提として、今、電話口にある方がキーマンで良いのか、都合の良い時間帯はどうかなど、最低限ヒアリングしておかなければならないことがあります。

 また、「答えてくれ無さそう」というのは、多くの場合、「はい、いいえ」でしか答えてくれず、迷惑がっているように感じ、コミュニケーターが委縮してしまう場合です。これも、なぜ「はい、いいえ」だけの返答が続いているのでしょうか。その理由をまずは確かめる必要があると思います。もしかしたら、先ほどの例と同様に、何か手短に済ませたい理由があるのかもしれませんし、こちらのからアプローチを快く思っていないとすればその理由も確認しなければ、この顧客に対する対応は定まりません。何はともあれを聞くという行為をしなければ、分からないのです。

 こうしたことをせずに、一方的に判断し、ヒアリングを敢えてしないというのは、これは、防御の姿勢であると考えます。本当の理由は、後者のようなことなのでしょうが、自分は悪くないという姿勢を取りたいのが人の常です。

 ですから、スキルアップするためには、課題を認め、アドバイスを受け入れることが必要ですが、変化するのが怖い、今よりももっと成果を求められるのが嫌だといった保守的なスタンスのコミュニケーターはここで防御というブレーキが作動するのです。

  そして、もう一つ、「営業」ということ自体を悪と考える傾向が根強く残っているというケースです。アウトバウンドや何かこちらからアプローチすること自体が嫌なもの、拒否されるものという固定観念に縛られている方が非常に多いです。これには、そうなる理由は経験や職歴などに程度の傾向があります。

 あまり営業経験がない場合、営業のこと自体をよく理解しておらず、その価値や意味を理解していない場合です。

 そして、BtoCなどで良く見られるアプローチには、やや行き過ぎたものあり、一般消費者の立場で嫌な経験をしている場合が多いためです。

  実際に私も、最近、驚く体験をしました。個人宅にかかってきた電話ですが、「○○(苗字)と申しますが、奥様いらっしゃいますか?」というので、「どちらの○○様ですか?」と尋ねると「急ぎではないので結構です。」といって切電されました。もちろん、これが企業からではなかったのであれば、高校時代の友人であるとか〇〇に住んでいるとか、そうした情報を伝えて、接続を依頼するはずです。もし、企業であれば、特定商取引法の視点からもきちんと所属企業名を名乗らなければなりません。それが、この対応ですから、非常に驚きました。

 また、こちらが現状を話しても全く聞く耳を持たず、一方的にゴリ押ししてくるようなアプローチもあります。本当にどのような教育をしているものかと、目の前のコミュニケーターよりもその業務を依頼、指示する企業側の問題であると思いますが、そのような体験は誰もがあると思います。

 それが、そのまま「営業=悪」という図式になり、お客様の声色が自分の想像と違うような場合やちょっとトーンダウンした瞬間にブレーキが作動するのです。

 この心のブレーキそのものに善悪はないと思います。防御したくなるもの、営業に対する誤解があるのも仕方がありません。しかし、そのこと自体を育成担当者がまず認め、それぞれにしかるべき対策を取ることです。

 しかるべき対策とは、難しいことはありません。その具体的な対策とは、次の通りです。

 まず、防御反応を示す場合は、自己弁護だとしても、その返答はそれで一旦受け入れましょう。言い訳だと指摘したとしても、防御の壁はますます高くなるばかりです。十分に想いを語ってもらった後で、「では、もしそうでなかった(顧客が忙しいわけでも、迷惑がってもいなかった)としたら、どうしたか?」と聞いてみましよう。そして、顧客がどんな状態ならヒアリングができそうか少しずつ質問するシチュエーションをイメージさせてください。質問をした時に良いイメージが描けないために不安や恐れに縛られている状態だからです。それをほぐし、トライするところまで持っていくことです。

 一方、営業に対する誤解がある時は、これは理論的に、体系的に毅然と説明をすることです。こちらはコーチングというよりはティーチングの方が良いかもしれません。つまり誤った営業に対する理解を是正することです。営業という仕事の価値、顧客へのメリットを説明します。営業とはクリエイティブな仕事であり、顧客からの感謝や企業への貢献という意味でリターンも非常に大きい仕事であると私自身感じています。そのような体験を含めて、営業の価値を存分に伝えてください。

 合わせて、一見、ネガティブに捉えがちな顧客の反応が、単なるを事実や意見としての反応と、拒否との違いを説明します。こうして、営業における誤解を解決するのです。

 だたし、この心のブレーキへの対策はコーチングの領域が非常に大きい点で、育成する側のスキルが求められるのも事実です。そうした意味で、解決が簡単であるとは言えませんが、ヒアリングへの大きな足かせが外れる場合も多く、試してみる価値は十分にあると思います。

 また、この方法で100%解決するわけではありませんので、心のブレーキの原因が何なのかを見極め対処することが望ましいです。

 ということで、ヒアリングを阻むものについて大きな要因である3つについてそれぞれ解説して参りました。いかがでしたでしょうか。現場のスキルアップにつながれば幸いです。

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